緊急人道支援

紛争や災害などの緊急事態が起きたとき、協力して支援するため、国連には「クラスターシステム」という仕組みがあります。分野ごとにリーダー役の機関が決められていて、ユニセフは「水と衛生」「栄養」「教育」のリーダーです。

緊急時、子どもたちが安心・安全に、できるだけ早く日常を取り戻せるよう、ユニセフはさまざまな支援をしています。また、いつでもどこでも72時間以内に支援物資を届けるため、日ごろから準備をしています。

新しい学用品で授業スタート! 箱の中の学校

ユニセフからの支援物資「箱の中の学校」に入っているノートを手に取る子どもたち
スーツケースほどの箱に、ノートや筆記用具、地球儀など、生徒40人のための教材と学用品が入っていて、いつでもどこでも学校を再開することができる。それが「箱の中の学校」と呼ばれる支援物資です。バングラデシュのロヒンギャ難民キャンプにも「箱の中の学校」が届きました。みんな、地球儀を囲んで楽しそう。ユニセフは、どのような状況にあっても、未来を担う子どもたちに貴重なまなびの場を提供しています。
空気でふくらむ地球儀に集まる子どもたち

子どもらしくいられる場所 子どもにやさしい空間

ユニセフの「子どもにやさしい空間」に集まった子どもたち
子どもらしくすごす時間は、心身の健やかな成長に欠かせません。しかし災害や紛争などの緊急事態は、子どもたちの日常を一瞬にしてうばってしまいます。ユニセフは、緊急事態下でも、子どもたちが安心してあそんだり勉強したりできる「子どもにやさしい空間」の設置・運営を支援しています。大型の台風で大きな被害を受けたフィリピンの「子どもにやさしい空間」では、避難中の子どもたちが安心してすごせるよう、訓練を受けた若者たちがリーダーになり、学習支援やレクリエーション、スポーツなどの活動をおこなっています。

女性・女の子のために 緊急時の女性に配慮した支援

難民キャンプの衛生委員の女性たち
緊急時、もっともきびしい状況に置かれるのは、女性や女の子です。特に難民キャンプなどの水くみ場やトイレは、人目につきにくくかったり、暗がりにあったりして、女性や女の子が暴力を受けやすい危険な場所のひとつ。紛争から逃れてきた人たちが暮らすコンゴ民主共和国の難民キャンプでは、衛生委員会の女性たちが「トイレが正しく清潔につかわれているか」「女性や女の子に危険はないか」などを確認し、自分たちで管理しています。ユニセフはこの難民キャンプで、給水設備を整備し、60以上の男女別のトイレを設置しました。

心落ち着かせて再出発 緊急支援拠点(ブルードット)

ウクライナとルーマニアの国境付近のブルードットに着いた難民の家族
2022年2月に激化したウクライナ紛争。周辺国へ逃れる子どもたちとその家族を支援するために、ユニセフは避難ルート上に「ブルードット」と呼ばれる安全な居場所をつくりました。ユニセフ職員のユリアさんは「紛争から逃れるため、住み慣れた家を出て、ほかの国へ移動しなければならない子どもたちとその家族が、少しでも気持ちを落ち着かせて目的地に向かって出発できるように支援しています」と話します。ここでは、食料や水の提供、交通手段や宿泊場所の確保に加え、子ども用のあそび場と専門家による心のケアも提供しています。

すべての子どもに安全な水を 緊急時の水と衛生

モザンビークの避難民キャンプでユニセフが支援する手洗い場をつかうアナさん家族
笑顔で写真に写るアナ・ホセさんですが、ここまでの道のりは険しいものでした。2021年、モザンビークの故郷の町が武装勢力に攻撃され、アナさんは子どもを連れて、10日間ものあいだ、ときに激しい雨に降られ、ときに強い日差しにさらされながら、人目をさけて藪の中や川沿いを移動し、ようやく避難民キャンプまでたどり着いたのです。どんなときであっても、安全な水と衛生的な環境は、命を守るためになくてはならないものです。ユニセフは、避難民の家族に衛生キットを配布したり、トイレと手洗い場の建設を支援したりしています。

子どものもとへかけつけます 移動式栄養チーム

エリックくん(1歳)とふれあう移動式栄養チームのメンバーたち
緊急事態下で、保健センターに来ることができない子どもたちのため、ユニセフは移動式の栄養チームを組織しています。新型コロナウイルス感染症拡大の影響で家計が苦しく、じゅうぶんに食べることができなかった1歳のエリックくんは、村を訪れた栄養チームのおかげで栄養が足りていないことがわかりました。栄養チームからビタミン剤などの提供を受けて、お母さんに毎日食べさせてもらい、元気を取り戻すことができました。
元気を取り戻したエリックくん

これでもう寒くない! 緊急支援物資

シリアの避難民キャンプにて、ユニセフから冬服を受け取るラシドちゃん
シリアの避難民キャンプで暮らす子どもたちに、ユニセフから暖かい衣類が届きました。シリアの冬は寒さがきびしく、気温が氷点下になる日もあります。しかし、紛争地からキャンプへと逃れてきた子どもたちとその家族が持ってこられる荷物はわずか。ラシドちゃんと祖母アリアさんは「冬服を持ってこられなかったうえに、このキャンプに到着してから、一着の服も買えていなかったんです」と話します。でも、これでもう寒くありません。子どもたちの健康を守るため、ユニセフはシリアや周辺国の子どもたちに冬服を届けています。

復興を通じてより良く ビルド・バック・ベター

ユニセフの支援する給水設備で水をくむコンゴ民主共和国の子ども
ユニセフは、“Build Back Better” (ビルド・バック・ベター)「災害発生以前からあった問題を復興支援を通じて解決し、以前より良い状態へと再建する」という考えで支援活動をしています。2021年、コンゴ民主共和国の火山噴火で被災した地域に、ユニセフの大型の給水タンクが設置されました。被災前から、水くみやトイレの設備が不十分で、子どもたちが病気にかかることが心配されていた地域でしたが、復興支援を機に改善されました。
新しく設置された大型の給水タンク